大判例

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東京地方裁判所八王子支部 昭和39年(ワ)273号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、消費生活協同組合法第九六条は、「組合員が総組合員の十分の一以上の同意を得て、総会の招集手続、議決の方法又は選挙が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款に違反することを理由として、その議決又は選挙若しくは当選決定の日から一箇月以内に、その議決又は選挙若しくは当選の取消を請求した場合において、当該行政庁は、その違反の事実があると認められるときは、その議決又は選挙若しくは当選を取り消すことができる」と規定している。所定の事柄の是正については、裁判所によるよりも、行政庁によつて迅速適切な救済を与え、組合員の自主的請求の有無を鍵として速かに法的安定をもたらそうとするものと見ることができる。もちろん、議決や選挙の実体がなく全く架空なものであるとか、または内容が法令、定款等に違反して、決議や選挙としてとうていゆるされない無効のものである場合は、右法条所定の場合とはおのずから別であつて当然裁判所による是正の途が奪われるものではない。しかしながら、一応議決や選挙としてなんらかの実体の存在し、その内容として無効のものでない限りは、たとえ総会が適法に開かれていなくとも、右法条が適用され、組合員らは右規定の定めるところによつて、当時残存する限りの組合員の十分の一の同意を得て行政庁に対し決議又は選挙の取消を請求すべきであり、そのことなくして事態を承認ないし黙認し、その他権利の上に眠つて経過した場合において、後日裁判所に対してその取消や無効を主張して提訴し又はその有効を前提とする他の訴訟において抗弁としてその無効を主張することはゆるされないものと解せられる。(中略)

二、本件建物が原告組合の所有に属することおよび原告組合の保存登記があることは前認定のとおりであつて、客観的には所有権移転行為を決議したことになる。しかも前顕各証拠に弁論の全趣旨を綜合すると、本件建物は原告組合としては唯一の不動産であり、組合活動の唯一の根拠であり、決議の結果としてなされるところのその所有権を失う行為、広義の所有権移転行為は、所有権移転登記手続をも含めて、すべて原告組合理事としてなすべき常務とはいいがたい。況んや仮処分決定による組合理事職務代行者においては、理事の職務停止の仮処分の保全目的に則してその職務権限を代行すべき善管義務を有し、組合の唯一の財産を失う上叙行為のごときは、ただになすべき常務に非ざるのみならず、理事の職務執行停止の仮処分の趣旨目的、従つてその職務代行者としての職務権限を著るしく逸脱する無効の行為といわなければならない。(中略)

三、原告は、右理事会の決議と所有権移転行為は、理事長の職務代行者岸副儀平太を差し置きその不参加の下になされたものであるから無権限行為である、と主張するのであるが、消費生活協同組合法による組合の理事は、各自組合を代表する職務権限を有し(同法第四二条)、定款で理事長の定めをして、これらの者にのみ代表権を認めることにしても、これを善意の第三者に対抗することはできず、理事並びに理事長ではないと信じ、否認抗争する組合員に対して、理事長たること、従つて代表権を独占することをもつて対抗することはできないものと解せられる。原告のこの点の主張は採るを得ない。(立岡安正)

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